分析結果

2026年7月中旬〜下旬前半の記録的高温 「エルニーニョ下でも発生、地球温暖化がなければ起こり得なかった」

2026年8月3日
2026年7月中旬〜下旬前半の記録的高温イベントをWAC手法により分析したところ、地球温暖化がなければこのレベルの高温は起こり得なかったことが分かりました。
地球温暖化がなかったと仮定した気候条件では、同レベルの高温の発生確率は約0.006%(再現期間1万年超)であり、ほぼ発生し得ないレベルであった。
1991〜2020年の平年の気候条件では約74年に1度の高温が、温暖化が進んだ2026年の気候条件では約37年に1度へと、発生頻度が約2倍に高まっていた。
今回の高温は、日本の夏の高温発生確率を低下させることが知られているエルニーニョの影響下で発生した。
イベント期間中の大気の状況
WAC手法によるEAの結果

1. 分析対象イベント

2026年7月中旬以降、西日本を中心に全国的な高温となり、7月11日~25日で期間平均した西日本〜東日本南部の上空約1500mの気温は、いずれも7月の同時期としては1950年以降で観測された第2位の高温となりました。気象庁の分析では、7月中旬の地表気温は北日本および西日本で歴代1位の高温となり、さらに7月下旬も西日本で歴代1位の高温となりました*1。

7月20日~27日の期間では、猛暑日となった地点は連日200地点を超え、22日には298地点に達しました。また、21日から25日にかけては東海地方を中心に延べ22地点で、27日と28日には西日本の2地点で、40度を超える酷暑日が観測されました。

7月11日〜25日の高温の要因として、日本付近で背の高い高気圧が発達し、西日本を中心に下降流が卓越した事が挙げられます(図1)。この高気圧の発達には、ユーラシア大陸から日本付近まで偏西風に沿って伝わった大気の波が関係していると考えられます*2。高温をもたらした大気の流れの詳細については、気象庁報道発表をご参照ください*1。

 

図1 2026年7月の高温イベント期間中の大気の状況
2026年7月11日〜25日平均の(a) 850hPa(上空約1500m、対流圏下層に相当)の気温(陰影)と500hPa(対流圏中層に相当)の高度(実線:高気圧、破線:低気圧)、(b) 鉛直流(陰影:正値は下降流、負値は上昇流の強化)と850hPaの高度(実線:高気圧、破線:低気圧)。すべて平年値からの偏差を示す。

 

2. 分析結果

WAC手法を、2026年7月11日~25日の西日本から東日本南部地域(図1aの黄色枠内)の高温イベントに適用した結果、この時期の上空約1500mの気温が実況の気温(20.3℃)を上回る確率は、既に生じている地球温暖化の影響を考慮した2026年の現実的な気候条件では約2.7%であり、これは約37年に1度の頻度で発生することを意味します。平年(1991~2020年の30年)を基準とした場合、この高温イベントは発生確率約1.4%(およそ74年に1度)に相当し、2026年の条件下では、平年よりも発生頻度が約2倍高まっていたことが示されました(図2の赤実線と薄い赤色の山型の差)。

さらに、人間活動による地球温暖化がなかったと仮定した(非温暖化)気候条件では、この発生確率はわずか約0.006%(再現期間は1万年超)となり、地球温暖化の影響がなければ、このレベルの高温現象は発生しなかったことが示されました(図2の赤実線と青実線の差)。

 

図2 2026年7月11日~25日の記録的高温イベントに対するEAの結果
西日本〜東日本南部(東経130-140度、北緯32.5度-37.5度)で平均した、高度約1500mの気温に対する発生頻度の確率分布を示す。赤実線は現実的な(地球温暖化を含む)気候条件下、青実線は、地球温暖化がなかったと仮定した場合(非温暖化)の気候条件下における気温の出現頻度。薄い赤色は平年(1991~2020年の30年間)の7月11日〜25日の現実的な気候条件を、青色の山型は非温暖化条件下における出現頻度を示す。黒破線は同期間の観測値を示す。

 

2025年6月の海面水温は、エルニーニョの発達により熱帯中部〜東部太平洋で高温となりました*3。また、中緯度の北太平洋域でも高い海面水温が持続していました*3。エルニーニョは日本の夏の高温発生確率を低下させることが知られていますが、エルニーニョ下の2026年の自然変動による日本の高温発生確率への影響は、平年とほぼ変わらないことがわかります(図2の青実線と薄い青色の山型の差がほとんどない)。この背景には、北太平洋域の高い海面水温が影響している可能性もあり、自然変動による影響については今後更なる分析が必要です。

 

参考情報

*1 気象庁報道発表「 2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて 」
https://www.jma.go.jp/jma/press/2608/03b/japan_hot20260803.html

*2 図1と同じ。ただし、200hPa高度の平年偏差から東西平均を差し引いた値を示す。矢印は、偏西風に沿った大気の波の伝播を示す。

*3 2026年6月の海面水温偏差

 

(分析・執筆:東京大学大気海洋研究所 高橋千陽)

※要クレジット明記
©︎Weather Attributuion Center