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【研究者コラム】2026年1月の大雪について、WAC参加研究者による速報的な分析結果の解説コラムを掲載しました

2026年1月27日
2026年1月21日〜23日の大雪について、WAC参加研究者である北海道大学大学院地球環境科学研究院佐藤友徳教授による解説コラムを掲載します。北海道大学の研究グループによる分析によると、地球温暖化の影響で北陸地方、東北地方、北海道地方などで降水が強化され、内陸や山沿いの降雪量増加に寄与した可能性があることがわかりました。
東北から北陸の日本海側の多くの地点で降り始めからの降雪量が100cmを超え、石川県(21日)、滋賀県(22日)、福井県(24日)などで「顕著な大雪に関する気象情報」が相次いで発表された。
東日本日本海側や北日本日本海側では、人間活動による地球温暖化によって降水(降雪を含む)が増加し、特に気温の低い内陸や山沿いの降雪量の増加に寄与した可能性。
東日本日本海側では、極端な降水が約9.5%増加。なお、気温の低い内陸や山沿いでは、この期間の降水はほぼ雪として降ったと考えられる。

1. 分析対象イベント

2026年1月下旬に強い寒気が日本列島に流れ込んだ影響で、全国的に低温やまとまった降雪が観測されました。東北から北陸の日本海側では降り始めからの降雪量が多くの地点で100cmを超えたほか(図1左)、1月21日に石川県で今季初めて気象庁から「顕著な大雪に関する気象情報」が発表され、同週に滋賀県(1月22日)や福井県(1月24日)、週末にかけても発表が相次ぐなど、短時間の記録的な降雪にも警戒が呼びかけられました。

日本海側の一連の大雪の要因として、西高東低の冬型の気圧配置のもとで、大陸からの強い寒気が日本海で暖められながら水蒸気を蓄えることで筋状雲が発生したことに加えて、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)に沿って雪雲が発達したことが挙げられます(図1右)。これは日本海側の地域で大雪が発生する典型的な条件です。

 

図1 イベント期間の大雪の状況
左:2026年1月23日までの72時間降雪量(気象庁HPより)。新潟県魚沼市で134cm、十日町市で119cm、福島県南会津郡只見町で115cm、青森県青森市(酸ヶ湯)で106cmなど、広い範囲で1メートルを超える降雪を観測した。
右:1月22日3時のひまわり画像(JAXAひまわりモニタより)。日本海を筋状雲が覆い、日本海西部には風の収束による発達した雲が確認できる。

2. 分析結果

北海道大学の研究グループでは、このような地域スケールの極端気象をもたらす、特徴的な気圧配置に着目した分析手法を開発し、WACとともに実証実験中です。

この手法では、2026年1月21日〜23日の期間における日本周辺の気圧配置とよく似た事例を、既存の気候モデルシミュレーションのデータベースから多数検索し、地球温暖化の寄与を評価します。膨大なデータの処理に機械学習を取り入れることで作業を効率化し、準リアルタイムの分析を可能にします(「補足:本分析手法について」を参照)。

検索された事例(類似事例)では、日本海上の筋状雲の発達に対応して日本列島に近づくほど降水量が増加する特徴や、JPCZに対応する帯状の降水域と北陸地方周辺の強い降水が表現されていることが確認できます(図2a)。これらの特徴は実際に観測された降雪量分布の特徴をよく表しています。自然変動のみを考慮したシミュレーションから検索した類似事例でもよく似た降水量の分布を示します(図2b)。このことは、強い冬型の気圧配置による大雪は地球温暖化が進行していなくても起こる現象であることを裏付けます。

図2cは人間活動による地球温暖化の影響を考慮したシミュレーションの類似事例(図2a;200事例)と、自然変動のみを考慮したシミュレーションの類似事例(図2b;200事例)の差、すなわち地球温暖化による降水量の変化を表します。この図から、地球温暖化によってJPCZに沿った領域や北陸地方、東北地方、北海道地方などで降水が強化されていた可能性があることが分かります。

 

図2 アナログ手法によるEAの結果
2026年1月21日〜23日と類似した気圧配置を示す事例の72時間降水量の分布。(a)人間活動による地球温暖化を考慮したシミュレーション、(b)自然変動のみを考慮したシミュレーションから、それぞれ200事例を検索した場合の結果。いずれも日本海側の各地域で降水量が多いことに加え、筋状雲やJPCZに対応する日本海上の降水が確認できる。(c)地球温暖化による降水量の変化(aとbの差)。

 

類似事例に基づいて、各地域内の最大降水量を比較すると、北日本日本海側や東日本日本海側では、地球温暖化によって降水量が増加する傾向にあることがわかります(図3)。

気象庁の観測によると、新潟県の川谷(上越市)や十日町(十日町市)では72時間降水量が150mmを超えました。このようなまとまった降水は、同様の気圧配置のもとでは、約20回に1回の強さ(発生確率 4.8%)に相当すると見積もられます。一方、地球温暖化がない場合では発生確率は1.6%と見積もられることから、東日本日本海側において、今回のイベントのような事例は地球温暖化によって約3倍起こりやすくなっていると評価されます。また、地球温暖化がない場合では、約20回に1回の強さは137mmに相当することから、地球温暖化によって降水量が約9.5%強まっていたと考えられます。

同様に北日本日本海側においては、山形県肘折(最上郡大蔵村)で観測された75mmを基準とすると、温暖化によって発生確率が1.4倍増加していたことが分かりました。

なお、ここで見積もった発生確率は、地球温暖化がある場合とない場合の両方において同じ気圧配置が存在することを仮定しているため、今冬の気圧配置の発生確率については比較できないことに留意が必要です。

 

図3 地域別の72時間降水量の比較
北日本日本海側、東日本日本海側、西日本日本海側の各地域内における最大72時間降水量の比較。棒グラフは200個の類似事例による分布を、線は近似曲線を表す。赤は人間活動による地球温暖化を考慮したシミュレーション、青は自然変動のみを考慮したシミュレーションから検索した類似事例の結果。

 

3. 追加的な分析の必要性

北海道大学の研究グループによる本分析結果は、降雪量ではなく降水量(雨+雪)を評価したものです。地球温暖化による気温や海水温の長期的な上昇は、降水に対する雪の割合を低下(雨の割合を増加)する傾向があります。本分析の対象期間は、全国的に強い寒気に覆われていたため、雪の割合が低下しにくかったことも、雪による影響が大きかった要因の一つと考えられます。ただし、北陸地方以南の比較的気温の高い沿岸や平野部では温暖化によって雨やみぞれの割合が増え、降雪量として減った可能性もあり得ます。

2026年1月以降の強い寒気の流入に関しては、北半球規模の偏西風の大きな蛇行と、ブロッキング高気圧や寒冷渦など極端気象の背景となる現象が関係していると考えられます。これらの現象の詳細な分析や地球温暖化による影響については、別途検証を重ねる必要があります。また、本コラムで評価した地球温暖化による降水量の変化は速報的な結果であり、確度の高い量的な診断には擬似温暖化実験等の高解像度シミュレーションを併用することが効果的です。

 

補足:本分析手法について

今回の分析には、気候モデルシミュレーションのビッグデータと機械学習を併用した、天気図アナログ法と呼ばれるイベントアトリビューション手法を採用しました。

この手法では、対象とした2026年1月21日~23日における日本周辺の海面更正気圧とよく似た気圧配置となった事例を、d4PDF(データ出典1)の過去実験および非温暖化実験の中からそれぞれ200事例ずつ検索し、解析しました。検索の際には、ある時刻の気圧配置だけでなく、その時間変化の類似性も考慮することで気象学的に似た性質を持つ事例を選びます(参考資料1)。

本コラムでは、迅速な分析のために各種観測データを反映した再解析データの代わりに、気象庁による前日21時初期値の海面更正気圧の予報値(データ出典2)を用いました。降水量の解析には、水平格子間隔20kmに力学的ダウンスケーリングしたデータを用いています。データ取得の制約から、類似事例は2011年〜2016年に相当する期間のシミュレーションデータベースから検索しました。そのため、今回の評価は同期間の温暖化レベルに相当する影響を見積もっています。同期間以降も1月の気温が上昇傾向にあること(参考資料2)から、実際の温暖化による影響は本分析結果よりも大きくなる可能性があります。

データ出典

  1. 地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース
  2. 気象庁メソ解析データは京都大学生存圏研究所が運営する生存圏データベースによって収集・配布されたものを使用しました。

参考資料

  1. Tamura, K. and T. Sato, 2024: Evaluating how historical climate change affected a heavy snowfall event in northern Japan in mid-December 2021 using two pseudo global warming methods. J. Geophys. Res. -Atmos., 124, e2024JD041553, DOI:10.1029/2024JD041553. (関連プレスリリース「これまでの地球温暖化によって札幌の大雪は強まっている~機械学習と高解像度シミュレーションを組み合わせた新手法で極端気象の要因分析を高度化~」
  2. 気象庁,日本の1月平均気温偏差の経年変化(1898〜2025年)