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【研究者コラム】2026年5月後半の記録的高温について、解説コラムを掲載しました

2026年6月11日
2026年5月後半の記録的高温について、WACリサーチフェローである東京大学大気海洋研究所高橋千陽特任助教による解説コラムを掲載します。全国的に高温となった今回の事例について、WAC手法による分析を実施した結果、5月後半の高温は、地球温暖化によって発生リスクが29倍に高まっていたことが示されました。
5月17〜31日平均の日本(北海道・沖縄を除く)上空約1500mの平均気温は、5月の同時期として1950年以降で最高値を記録した。
この時期の1500m気温が実況値(13.9℃)を上回る確率は、2026年の現実的な気候条件では約18.6%(約5年に1度の頻度)であり、平年(1991〜2020年)と比較して発生頻度が約3倍高まっていた。
人間活動による地球温暖化がなかったと仮定した気候条件では、この発生確率は約0.65%(約150年に1度の頻度)にとどまり、地球温暖化の影響によって発生リスクが約29倍に高まっていたことが示された。
2026年5月の海面水温などの自然変動も、高温イベントの発生リスクを約2.3倍高めた。北西太平洋域や熱帯中部〜東部太平洋域の平年より高い海面水温が、発生リスクの増加に寄与した可能性がある。

1. 分析対象イベント

2026年5月後半は全国的に高温となり、5月17〜31日で期間平均した日本(北海道・沖縄を除く)上空約1500mの気温は、5月の同時期としては1950年以降の観測で第1位の高温となりました。この期間には、18日に313地点で真夏日、2地点で猛暑日を観測し、その後も5月下旬にかけて全国100地点以上で真夏日を観測した日が断続的にみられるなど、5月後半に広い範囲で季節外れの高温となりました。

この要因として、北半球側の西部熱帯太平洋で対流活動が活発だったことや、日本の北側で寒帯前線ジェットが強まったことが挙げられます。これらの影響により、日本付近で背の高い太平洋高気圧が強まり、暖かい空気が流れ込みやすくなったことが考えられます(図1)。

図1 イベント期間中の大気の状況
2026年5月17日〜31日平均の(a) 850hPa(上空約1500m。対流圏下層に相当)の気温の平年値からの差を陰影でしめす。等値線は、大気の流れの平年値からの差を示す。実線は高気圧性の流れの偏差、破線は低気圧性の流れの偏差を表す。

 

2.分析結果

2.1地球温暖化の影響

WAC手法を2026年5月後半の高温イベントに適用した結果、この時期の上空約1500mの気温が実況の気温(13.9℃)を上回る確率は、2026年の現実的な気候条件では約18.6%であり、これは約5年に1度の頻度で発生することを意味します。平年(1991~2020年の30年)を基準とした場合、この高温イベントは発生確率約5.8%(およそ17年に1度)に相当し、2026年の条件下では、平年よりも発生頻度が約3倍高まっていたことが示されました(図2の赤実線と薄い赤色の山型の差)。

さらに、人間活動による地球温暖化が無かったと仮定した(非温暖化)気候条件では、この発生確率は約0.65%で、およそ150年に1度の稀な現象であり、地球温暖化の影響によって、この高温の発生リスクが約29倍に高まっていたと推定されます(図2aの赤実線と青実線の差、図2b)。

図2 WAC手法によるEAの結果
(a)日本域(東経130-142.5度、北緯31.25-40度): 2026年5月17日〜31日の記録的高温イベントに対して、WAC手法を適用した結果を示す。横軸は日本上空(図1の黄色枠内で平均した)高度約1500m(850hPa)の気温、縦軸は頻度を示す。赤実線は現実的な(地球温暖化がある)イベント期間の気候条件下、青実線は、地球温暖化が無かったと仮定した場合(非温暖化)のイベント期間の気候条件下における気温の出現頻度。薄い赤色と青色の山型は、平年(1991~2020年の30年間)の5月17日〜31日の現実的な気候条件および非温暖化条件下における出現頻度をそれぞれ示す。実測値を示す黒破線の値を超えた面積から、今回の高温イベントの発生確率を求めた。(b) 2026年5月17日〜31日の高温イベント発生確率に対する地球温暖化と自然変動の影響

 

2.2 海面水温の影響

※以下は開発途中の手法に基づく試算結果です。数値は暫定値であることにご注意ください。

2026年5月の海面水温は、熱帯太平洋域で高く、エルニーニョの発達期に似た分布となりました(図3a)また、北太平洋の北緯30度〜50度帯でも高温が持続していました。2026年の海面水温などの自然変動は、日本の高温イベント発生リスクを約2.3倍高めたと見積もられます(図2aの青実線と薄い青色の山型の間の差、図2b)。

WAC手法を応用することで、5月後半の日本の高温イベントに対する海面水温の影響を、海域ごとに推定しました。北西太平洋域の海面水温偏差を取り除いた場合、現実的気候下における高温発生確率は約18.6%から約16.1%に低下しました。これは、同海域の海面水温偏差がこの高温イベントの発生確率を約1.15倍高めたことを意味します(図3b)。また、熱帯中部太平洋域および熱帯東部太平洋域の海面水温偏差も、発生確率をそれぞれ約1.14倍、約1.10倍高めたと推定されます。温暖化の影響に比べて小さいものの、海面水温偏差もこの高温イベントの発生リスクの増加に寄与した可能性があります。

図3 WAC手法を応用して見積もった海面水温の影響
(a)2026年5月の海面水温偏差 (b)現実的な(地球温暖化がある)気候条件下において、各海域の海面水温偏差の影響を取り除いた場合の高温イベントの発生確率を示す。北西太平洋域、熱帯中部太平洋域、熱帯東部太平洋域は図3aを参照。右図は、各海域の海面水温偏差によって、高温イベントの発生確率が何倍になったかを示す。

 

(分析・執筆:東京大学大気海洋研究所 高橋千陽)